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ダムに地震計が使われている理由
ダムに地震計が設置されていることはご存知でしょうか?ダムに地震計が設置されている理由についてまとめました。
「ダム」とは?
ダムは日本語で堰堤(えんてい)とも表現されます。川を堰き止めて水を貯めるおなじみのダムですが、法的には堤高(堰堤の高さ)が基礎地盤から15m以上のものを「ダム」と呼び、堤高が15m未満のものを「堰(せき)」と呼んで区別しています。世界的な基準では、国際大ダム会議によって堤高5m以上または貯水容量300万立方m以上のものをダムと呼び、そのうち堤高15m以上のものをハイダム(大ダム)、それ以下はローダムと規定しています。
法的に「ダム」と呼んでいるものは、世界的にはハイダム(大ダム)と呼ばれる分類にあたります。
(本記事の「ダム」は法的なダム(ハイダム(大ダム))を指すものとします)
ダムに地震計がある理由
ダムは巨大な構造物ですが、同じく巨大な構造物であるビルやマンションなどとは違って老朽化によって撤去や建替えなどができるものではありません。そのため安全性を確認する点検や検査は、一般的な構造物以上に重要となります。このような観点から、地震によるダムへの影響に対しては、一定の強さ以上の地震があった場合にはダムの臨時点検を行うよう国土交通省から通知(通達)が出ています。
「国土交通省 河川砂防技術基準 維持管理編 (ダム編)」によりますと、地震によって臨時点検が必要な基準は
ダムの基礎地盤又は堤体底部に設置した地震計により観測された地震動の最大加速度が25ガル以上である地震、又は気象台で発表されたダム地点最寄りの観測点における気象庁震度階が4以上である地震が発生した場合
とされています。また地震計に対しては
地震計は、最大加速度に加えて、強い地震動によるダムへの影響を分析するために有用な情報となる地震波形を記録し、デジタルデータとして保存できるものとすることを基本とする
と書かれています。この基準に則ってダムには地震計が設置されますが「基準」であり法令ではないため、全てのダムに地震計が設置されていないのが現状です。特に旧建設省の通達以前に完成した古いダムには地震計が設置されていないことがあります。
「強い地震動によるダムへの影響」の分析のためには、その地点でどれだけの地震動があったか?またその地震動によってダムがどれだけ揺れたか?のデータが必要です。そのため最低でも、基礎地盤部や下部監査廊(その地点の地震動観測用)と、天端(ダムがどれだけ揺れたかの観測用)の、上下2箇所に地震計(感振器・検出器・センサー)の設置が必要です。
勝島製作所のダム向け地震計
当社では、今まで国内外500あまりのダムに地震計を納入して参りました。社内の記録では1950年代からダム向けの地震計出荷が始まっていますが、1963年完成の黒部ダム、1970年完成の喜撰山ダム、1979年完成の高瀬ダム・七倉ダムなど、安全管理目的のみならず、当時最先端の建築技術を使った設計の検証や、巨大ダムの挙動検証を目的として当社の地震計が採用されました。その後、SD型検出器の開発、さらに耐雷システムでの特許取得により、厳しい環境下においても壊れないという特長をお客様に認められ、数多くのダムに当社の地震計をご採用いただいております。
関連図書・通知(通達)
国土交通省 河川砂防技術基準 維持管理編 (ダム編)
地震発生後のダム臨時点検結果の報告についての一部改正について(平成25年7月11日、国水流第4号、国土交通省 河川環境課長通知)
地震発生後のダム臨時点検結果の報告について(昭和53年1月20日 建設省河川局開発課長通達)
「大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)」の試行について(平成17年3月30日、国河治205号、国土交通省 河川局治水課長通知)
大規模地震に対するダム耐震性能照査指針(案)・同解説(平成17年3月、国土交通省 河川局治水課)