手作り地震計あらため教育用簡易地震計 – 地震計の勝島製作所
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手作り地震計あらため教育用簡易地震計

「ほぼ」100均のもので作る手作り地震計 あらため 教育用簡易地震計を紹介いたします。

今後はKES(Katsujima Educational Seismometer)シリーズとして開発を進めていきます。

教育用簡易地震計といっても手作り地震計の流れを汲むものです。
これまでの手作り地震計はセミナー等でご活用いただくことを想定したときに、接着剤が乾くのに時間がかかるという大きな制約がありました。
出来ればプラスチックで学校教育等で採用されている実験キットくらいのものに出来たらいいなと思っていたところ、
気軽に使える家庭用3Dプリンターが複数登場しハードルが下がってきているという機運もあり弊社も3Dプリンターを購入することになりました。

定規とペンとカッターとボンドで作っていた時代から使える道具が一気に進歩したことで、強度と精度を出せる様になりました。
流石に「手作り」とは言い難くなってしまいましたが、それでも今やゲーム機よりも安くすぐ使える3Dプリンタが買える時代がきたと言うことでよしとしてください。

さて、肝心の地震計ですが基本的には前回の工作用紙のものをとりあえずPLA製に作り直したものです。
そして強度がある程度期待できることから機構部分の作成にも成功いたしました。
そうはいってもバネの問題はなかなか難しく、まずは水平動の地震計、つまりほぼ水平にまで寝かせた振子の地震計です。

一般的な機械式の地震計と異なり磁石の方を動かす構造をしていますが、相対的な動きを見たいだけですので特に問題はありません。
機械式の地震計が普通コイルの方を動かすのは安定した強力な磁石を使うとどうしても大型化してしまい、支えるバネを用意するのが大変になるためです。

機構部分を並行リンク機構にする事で振子の安定性を確保し、また磁石の重さや3Dプリンタゆえの内部の充填の差異による重心位置の変化を気にしなくていい様になっています。
リンク部分は三角形のエッジを立てることで摩擦の影響の低減を図っています。重い磁石部を振子としているのも摩擦の影響の低減に寄与しています。

この地震計には粘性抵抗で強く減衰する仕組みがないため、加速度計ではなく速度計として機能します。
以下が加速度計と並べて実際に振ってみた波形です。
上が簡易地震計、下が基準加速度計ですが位相が綺麗にずれていてちゃんと速度計になっていることが確認できました。(極性は逆になってます)

5Hzで加振時の波形

こちらは実際の地震を観測した波形ですが、「それっぽい」波形がちゃんと得られています。

思っていた以上に良さそうに出来ていますが、
実は周波数や振幅によって波形が乱れたり対称性が崩れていたり、
3Dプリンタの出力ムラ、誤差等で調整に四苦八苦したりと色々と課題もございます。

今後はこれをベースに
・粘性抵抗を受ける機構を追加して加速度計にする
・上下動の地震計を作る
・パーツの組み替えで色々と試せるセットを用意する
あたりを目標に試作していきます。

日本地球惑星科学連合大会2025でも展示する予定ですので、弊社ブースへ是非お立ち寄りください。

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